退院後に転倒を繰り返していた患者さん| 私の訪問リハビリ事例

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脳梗塞を発症し、左片麻痺と高次脳機能障害を呈した患者様を訪問リハビリで担当しました。その方はご自宅への退院直後から車椅子移乗の際に何度も転倒されており、骨折などの重大な事故に繋がりかねない状況でした。

ご家族の希望で転倒対策を主目的として介入した事例についてご紹介いたします。

患者さんのプロフィールと訪問リハビリ利用の経緯

70歳代の男性Aさんは、元々自宅にて奥さまと二人暮らしをされていました。
しかし、脳梗塞の発症後、中等度の左片麻痺と高次脳機能障害(左半側空間無視、注意障害等)を呈し、ADL動作全般にわたって見守りから軽介助が必要な状況となりました。

入院中より移乗動作の際に車椅子のブレーキのかけ忘れや、フットレストの上げ忘れが多く、転倒のリスクが高い事例であったため、動作確認や環境調整、家族指導などを目的として、退院直後より訪問リハビリが導入されることとなりました。

退院から訪問リハビリの開始までに2度も転倒

初回訪問時、退院後の生活について情報収集していると既に2回も転倒されていたということが発覚しました。幸いけがはなかったものの、奥様も腰が悪く、転倒した夫を起き上がらせることができなかったため、近所の方に応援を頼んでやっとのことでベッドに戻したという状況だったようです。

実際に移乗動作を確認すると、Aさんはやはりブレーキをかけ忘れた状態で次の動作に移ろうとしてしまいます。
このような事例ではベッドサイドなどに注意を促す張り紙をすることがありますが、Aさんの場合は張り紙による注意喚起も効果はなかったようです。

奥さまはこれ以上転倒してほしくないという理由で、車いすを隠してしまうこともあったそうです。車いすで自由に自宅内を移動して、好きなことをしたいという希望を持っていたAさんは、これに対して腹を立てていらっしゃるようでした。

Aさんの場合の訪問リハビリにおける作業療法士の関わり方

Aさんの場合、まずは移乗時の転倒リスクに対して対策を行うことが急務でした。
車椅子のブレーキのかけ忘れに対しては、張り紙や声掛けでも修正が困難であったため、自動ブレーキ装置が付いた車椅子をお試しでレンタルしてみることにしました。これは装置による自動ブレーキでだけでなく、手動でブレーキをかけることもできるため、奥さまにも「安心感がある」と好評でした。

また、万が一転倒を起こしてしまった際にケガを悪化させたり、二次的な障害を引き起こしたりすることがないように、転んだ状態から自分で車椅子やベッドに戻るための動作を指導・練習しました。
奥様にも毎回リハビリに参加して下さったので、Aさんの今の動きの特徴をお伝えするとともに、腰が悪い方でも簡単に行える介助法を体得していただきました。

今回の訪問リハビリ事例に関する考察

自動ブレーキ装置つきの車椅子導入後、Aさんは移乗時の転倒を起こさなくなったため、その車椅子を継続して使い続けることにされました。
奥様も「これなら大丈夫」と車椅子を隠すことを止め、Aさんは車椅子で自宅の中を自由に移動できるようになりました。

現在、福祉用具は新しいものがどんどん開発されており、利用者様のより細かいニーズに応えられるようになっています。
Aさんの事例のように福祉用具を少し工夫するだけでも日中の活動範囲はがらりと変わる場合があります。
利用者様の「こんな生活をしたい」という希望を叶えるためには、訪問作業療法士にとって福祉用具等の知識は欠かせないことを実感しました。

また、今回の事例に限らず、転倒などのアクシデントが起こった際の対処法は、ご本人やご家族に必ず習得して頂くようにしています。
多くの場合、脳梗塞発症前と発症後では、空間の認知の仕方や体の動かし方が大きく異なります。「現在の自分の動作」を再認識し、適切な動きを習得することはとても重要なのです。

【作業療法士さん必見!】患者様ご家族と接するときの注意点4つ|訪問リハビリの基礎知識

2016.05.06

<まとめ> 訪問リハビリで退院後の転倒を減らすために

今回の事例のように、退院直後は転倒事故が多く発生することが知られています。転倒の理由としては、環境調整が不十分であることや、ご本人・ご家族の動作認識不足などが挙げられます。

訪問リハビリでは、転倒を減らすために利用者様の状況を正しく評価し、適切な支援を行っていくことが重要なのです。

writer
minimix

総合病院の作業療法士として急性期、回復期、維持期、訪問の各分野で経験を積んできました。
育児のために昨年から現場を離れましたが、ゆくゆくは同じく作業療法士である夫とともに、地域に根差したリハビリに携わりたいと思っています。

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