座位が取れる利用者様に立位をとってもらう介助のコツ|訪問リハビリのノウハウ集

訪問リハビリの利用者様は、家に閉じこもりがちで過ごしています。ベッド上で過ごす時間が長いので、下肢筋力が弱って立つことも困難になっている方も多くいます。

訪問リハビリで、立位を取ってもらうときに辛い思いをさせてしまうと、意欲もさがってしまいます。そこで、簡単な立位の取り方をご紹介します。

立位を忘れていた訪問リハビリの利用者様

訪問リハビリで出会った利用者の佐藤さん(仮名)は、下肢筋力が十分あるのに車椅子で移動していました。理由を聞いたら「立ち方が分からない」と言われました。

佐藤さんは転倒して軽いケガをされ、怪我が治るまでしばらく安静にしていたら、立ち方を忘れてしまったそうです。つかまり立ちはできるので、トイレやお風呂は一部介助で行えていました。
そこで、訪問リハビリで立ち方の練習をしてもらうと、すぐに立ち上がりができるようになりました。

わたしは「立ち方が分からない」という言葉の裏に、佐藤さんの「立つと疲れるから」もしくは「立つのが怖いから」という思いがあると推測したのですが、違いました。
”本当に立ち方を忘れていた”のでした。日頃、わたしたちが無意識に行っている「立ち上がりと立位保持」は、ご利用者様の中には忘れたら立てなくなる方もいらっしゃるほど、難しいと感じるものなのです。

実践テクニック①|立位の前に座位をとってもらう

立位をとるときに大事なのは、重心の位置です。重心が体の中心にないと、バランスを崩して転倒してしまいます。

そこで、立位の前に座位の練習をします。座位を保てるようになると、立位もとりやすくなります。佐藤さんの場合は、車椅子に座っていられるほどにの座位保持が可能でしたので、すぐに立位の練習に入りました。

車椅子の座面を両手で押して、お尻を浮かせる練習です。お尻を浮かせたら、自分でお尻を軽く叩いて、大殿筋を刺激してもらいました。
立位へつながるお尻の浮かせ方は、両手で座面を押すときに、前向き45度の方向に押すのがコツです。
佐藤さんは徐々に座位からお尻を浮かせる自信を、つけていきました。

実践テクニック②|座位から立位への重心移動と立ち上がり方

訪問リハビリの利用者様は、下肢筋力が低下しています。
立位をとろうとした利用者様が感じる不安は、立ち上がり時に勢い余って前方へ転倒することです。

佐藤さんも、前方へ転倒する不安があり、お尻を上げるところから立位保持まで、なかなか進みませんでした。
しかし、車椅子に座りっぱなしで痛くなった腰が、お尻を浮かせて軽く叩くと痛みが和らぎます。その動作を繰り返しているうちに、下肢筋力が増えてきました。

そこで次の立ち上がり方の練習を始めました。両膝に両手をついて、体を丸めてお尻を浮かし、両下肢を伸ばしてから頭をゆっくりと持ち上げて立位をとる方法です。

これは介護スタッフに傍についてもらい、トイレや入浴など立位をとるADL場面で、見守りで行ってもらいました。介助が必要なときには、介護スタッフが佐藤さんの体を前方45度の方向で支えました。

実践テクニック③|立ち上がったら、皆で拍手をしましょう

長い間、立位をとっていなかった人が急に立つと、視線の位置が変わって不安になります。そこで、家族と介護スタッフに褒めてもらうようにしました。
立位がとれたら拍手をしてもらいます。
そうやって、成功体験を重ねてもらい、佐藤さんに、立位への自信をつけてもらいました。
やがて、佐藤さんは両膝に両手をつかなくても立ち上がれるようになり、前方に転倒する不安も無くなりました。

立ち上がり動作と立位保持で下肢筋力を使うので、下肢筋力も増えます。その後、佐藤さんは通所リハの利用を開始し、杖で散歩を楽しめるようになりました。
座位から立ち上がって立位保持ができる自信は、ADL自立につながります。

<まとめ> 立位がとれると利用者の世界が広がります

佐藤さんのように長期間、座位ですごしていたために立位をとることを忘れてしまう利用者様は他にもたくさんおられます。

そのような利用者様は立位がとれるようになると、閉じこもりがちの生活から、自分で動く生活に変わって、世界が広がります。
立位をとることは、生活を変える第一歩になるのです。

writer
仲光久代

作業療法士を20年以上やっています。ケアマネと社会福祉主事資格あり。
総合病院と精神科病院へ勤務の後、現在は介護施設の通所リハとショートステイ部門を担当しています。

臥位から立位をとってもらう介助のコツとは?|訪問リハビリのノウハウ集

2016.10.06

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