訪問リハビリは大変?|作業療法士が困った寝たまま起きないリハビリ意欲が低い患者さん

訪問リハビリに伺うと、患者さまはだいたいベッドに寝ています。そこで、声掛けをして起こします。しかし、リハビリ意欲が低くて、起きようとしない患者さんを起こすのは大変です。さまざまな手段を使って患者さんに起きてもらう、訪問リハビリの大変さをまとめました。

1.大変な訪問リハビリのはじまり

わたしは作業療法士として総合病院に勤務していたときに、訪問リハビリにも携わっていました。
訪問リハビリの対象である患者さんたちは、一日中、寝て過ごしているので「リハビリですよ。起きましょう」と声をかけてもなかなか起きてくれません。起きる気力が湧きにくいのです。

岩田さん(仮名)もその一人でした。パーキンソン病が進行して、体が硬く、動きにくくなっていました。介助をして起こしても、すぐに「寝る。しんどい」と寝たがる、リハビリを進めるのが大変な患者さんでした。

毎回、岩田さんの家に行く前には、岩田さんに起きて動いてもらうためには、何をしたらいいか考えます。
ある日は写真集を持って行きました。また、ある日は粘土、ボール、ゴムバンド、リハビリ室にある物をつぎつぎと持って行きました。それでも、岩田さんはすぐに寝てしまいます。

2.訪問リハビリを嫌がる患者さん

食事や着替えなどのADLを行うためには、座位をとることが必要です。いつも寝てばかりいる岩田さんのリハビリ目標は、座位の安定です。
岩田さんは起きて座るだけで、体に大きな負担がかかります。しかし、寝たきりの人が座位をとったときになりがちな、起立性低血圧を起さない程度の体力はありました。

訪問リハビリは、まず、関節可動域訓練で体全体の筋肉をほぐし、関節を動かして体を動きやすくします。岩田さんは、関節可動域訓練を気に入って「気持ちいいなあ、あんた、マッサージが上手だね」と嬉しそうでした。

しかし、関節可動域訓練の後「それでは、起きて体を動かしましょう」と言うと、「マッサージだけでいいよ。運動はしない」と嫌がりました。

3.訪問リハビリの声掛けが大変だけど重要

訪問リハビリで体を動かすことを嫌がる岩田さんに、ベッドの端に座ってもらうためには、岩田さんが興味を持つ活動を用意することが必要です。
そこで、わたしは「昔の生活を収めた写真集」を用意しました。
岩田さんに「いいものを持ってきましたよ。起きて見ましょう」と声掛けをして、介助で座ってもらいました。

わたしが岩田さんの体を支えながら写真集を見せて、昔の思い出話をしてもらい、岩田さんが話に夢中になることで、座り続けるしんどさを忘れてもらおうという作戦です。

ところが、作戦は失敗。岩田さんは「ああ、こんなのもあった」と言いながら寝てしまいます。
次に、ボールやゴムバンドを用意して、わたしと一緒に軽い運動をしてもらおうと思いました。わたしは笑顔で明るく「一緒に体を伸ばしましょう」と声をかけたのですが、失敗。
岩田さんの「やらない」の一言で、その日の訪問リハビリは終わってしまいました。

4.「歌」をきっかけにリハビリに前向きに

訪問リハビリの大変なところは、病院のリハビリ室と違って、患者さんの家に訪問するところです。
そんなのは当たり前ではないかと思われるかもしれませんが、病院のリハビリ室は、病室から車椅子に移乗してもらって連れていくだけで、患者さんはリハビリをする気分になります。

しかし、訪問リハビリは患者さんがくつろいでいる部屋で行います。
リハビリに向けて気分を切り替えることが難しいのです。
岩田さんも、気分の切り替えができなくて、起きて体を動かす意欲がわかない状態でした。

その岩田さんが訪問リハビリに前向きになったきっかけは「歌」でした。
わたしが手作りした戦前戦後の歌謡曲の歌集に、岩田さんは興味しんしんになりました。ベッドの端に座って、わたしと一緒に歌ってくれたのです。
そして、訪問リハビリで歌うことを楽しみにしてくれるようになりました。

そうやって、少しずつ座る時間を持ち、リハビリ目標の座位の安定を達成しました。
続いて立つ練習を始め、岩田さんは自分で起きて座って、ポータブルトイレで用を足せるほど、体力をつけていくことができたのです。

訪問リハビリは大変だけど楽しいです

訪問リハビリは患者さんが日常生活を過ごしているところに行って行います。
患者さんが訪問リハビリを理解して意欲的になっていてくれれば、スムーズにリハビリを行えます。しかし、そういう患者さんばかりではありません。

訪問リハビリの大変さは、ずっと寝ていた患者さんの「意欲を引き出すところ」にあります。患者さんの興味を引く活動を用意して、患者さんが体を動かしたくなるように誘導するのは大変です。

しかし、大変だからこそ、患者さんが訪問リハビリに前向きになってくれたら、とても嬉しいです。そして、その患者さんが自分でできる事を増やして、できることを喜んでくれたら、もっと嬉しいです。訪問リハビリは大変だけど楽しいですよ。

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