注目の在宅医・いしが在宅ケアクリニック 石賀丈士先生の診療同行レポート!―在宅医療が”幸せな医療”であるために―

無料メルマガ登録

地方都市の在宅看取り率を、数年で日本有数にしてみせた四日市市。この独自の在宅医療提供体制「四日市モデル」には厚生労働省や多くの業界関係者が注目しています。その立役者が「いしが在宅ケアクリニック」の石賀丈士理事長。

某局のドキュメンタリー番組でもその活躍が取り上げられ、ますます注目を集めている石賀先生に、「実際にどのようにお仕事をされているのか、是非見せていただきたいです」と申し込んだところ、一日密着取材をさせていただけることになりました!

朝会に始まり、外来、訪問診療にも同席し、石賀先生が行う在宅医療の実際に迫ります。今回の取材レポーターは大阪市内で在宅医療に取り組んでいる医師の後藤克子さんです。

石賀丈士さん

医療法人SIRIUS いしが在宅ケアクリニック 理事長

2001年、三重大学医学部を卒業後、三重大学附属第二内科、山田赤十字病院(現・伊勢赤十字病院)内科・呼吸器科に勤務。2007年、介護とマネジメントを学ぶため、しもの診療所所長を2年間務め、2009年7月、三重県四日市市に緩和ケアを中心とした在宅医療専門の「いしが在宅ケアクリニック」を開業。

(過去記事のリンク)https://cocomedica.jp/interview42/

後藤克子さん

医療法人祐星会 桃クリニック 院長

和歌山県立医科大学医学部卒業後、大阪大学医学部整形外科研修を経て、大阪府立救命救急センター、大阪警察病院整形外科、四天王寺病院整形外科などに勤務。2012年10月に「桃クリニック」を設立。

(過去記事のリンク)https://cocomedica.jp/interview5/

三重県四日市市の“いしが在宅ケアクリニック”に到着!

6月某日。良く晴れた朝、いしが在宅ケアクリニックへ向かいます。

最寄り駅は、三岐鉄道の山城駅。本当にのどかです。

どこか懐かしいような、線路と踏切のある光景。

駅から5分ほど歩くと・・・見えてきました。

こちらが、医療法人SIRIUSいしが在宅ケアクリニックです!

いよいよ密着取材のスタートです。後藤先生、頑張ってくださいね。

事務部長の中村和親さんが出迎えてくださいました。

本日、同行させていただく石賀先生にご挨拶をする後藤先生。初対面です。

後藤先生
今日は一日よろしくお願いします!
石賀先生
はじめまして。こちらこそよろしくお願いします

真剣だけど明るい朝のミーティング

いしが在宅ケアクリニックでは、毎朝8時から朝のミーディングを行っています。ミーティングまでの時間で、中村事務部長にお話を聞く後藤先生。

後藤先生
こちらのクリニックでは常勤医8名、非常勤医1名とのことですが、先生方のお住まいは、このお近くなんですか?
中村事務部長
三重県の人が多いですが、県内でも高速道路を使って1時間くらいかかる、津から通うドクターもいます。そうそう、京都から通勤しているドクターもいますよ
後藤先生
え!京都からここまで、毎日?・・・大変ですね
中村事務部長
すごいですよね。遠方の人には夜間待機の当番の日、クリニックで用意したマンションの部屋を使ってもらっていますよ

さて、そろそろ朝のミーティングが始まります。

石賀先生
えー、今日は大阪から見学の先生がみえてます。後藤先生、どうぞこちらへ
後藤先生
え?いきなり私ですか?

紹介を受け、ちょっと動揺しつつも、全スタッフの前でご挨拶をする後藤先生。

後藤先生
今日はこちらでいろいろなことを教えていただこうと思って、大阪からやって来ました。よろしくお願いします。

朝のミーティングに同席。前日に急変のあった患者さんについての報告など、情報の共有と意見交換をしました。

電子カルテの内容をプロジェクターで投影しながら進めます。

患者さんのお人柄などについても、皆さん、親しみを込めて紹介していました。

真剣な中にも、明るい雰囲気が漂うミーティングです。

石賀先生の訪問には笑顔がいっぱい!

診察室で、在宅医療の導入に向けた相談外来を行った後、いよいよ訪問診療へ出発!

石賀先生の乗る、目立つレッドの車を追います。

患者さん宅には、基本的に医師とクリニックの看護師の2人体制で訪問、運転は看護師さんが担当します。

患者さん宅に到着。

いしが在宅ケアクリニックには10台の訪問車両がありますが、全て違う色にしているとのこと。

同クリニックでは、1人の医師が1日に平均6~10軒を回っています。

本日は3軒の訪問診療に同行させていただきました。

今回は、その中で撮影許可をくださった陣田さんご夫妻にお話を伺いました。

石賀先生とクリニックの看護師さんと共に、玄関に向かう後藤先生。

石賀先生
陣田さん、こんにちはー


後藤先生
お邪魔します

陣田さんご夫妻。ご主人の健造さんが末期の膵臓がんを患っています。

昨年12月、奥様の加代さんが口コミで石賀先生のことを知り、相談。それまで抗がん剤で弱り切っていた健造さんでしたが、その後、抗がん剤をやめて石賀先生の処置に任せてみたところ、全く食べられなかったのが嘘のように、食事も普通にできるようになりました。

当初はご本人も年を越せないと思っていたのに、半年たった今もこうして穏やかに暮らしています。食事も会話もでき、トイレも独力で行けます。

そして、お二人とも石賀先生を応援したい気持ちが強く、取材のときはいつも協力してくださるそう。

石賀先生の診療。

石賀先生
喉がつっかえてる感じがするの?喉が乾燥してるかな

「病院だとお腹を触ってもくれないことがある」と言う患者さんもいますが、石賀先生は体に触れることをとても大切に考えています。

そして、しっかり目線を合わせてお話をします。

石賀先生
浮腫みも減ってきてるからね、痰を出しやすくするために、水分もっと摂ってくださいね

患者さんと、クリニックの医師・看護師・訪問看護師・ヘルパー・ケアマネージャー等、多職種の方々が書き込む連絡ノート。毎日の状況が一目でわかります。

電子カルテの入力作業に興味津々の後藤先生。

石賀先生はセコム医療システムのクラウド型電子カルテ”セコムOWEL”を利用中。インターネットFAXなどの機能が充実していて、患者さん宅から処方箋を薬局に送ることもできます。

「私は石賀先生の応援団長よ」と加代さん。

「気さくで誠実なところが好き。先生だと安心。出会えて本当に良かったわ。先生も並々ならぬ苦労を7年間されて、こうして取材されたりテレビで全国に知ってもらえたりと、ようやく報われてホント、良かったねーって言ってるの」

御年75歳の健造さんは、そんな奥様に苦笑い?

いえいえ。ご主人も先生のことが大好きです。

「がんはね、悪いことばっかりじゃないですよ。こうして最期の時間を、二人でいろんな話をして過ごせているから。自然に穏やかに、ね。突然死じゃ、こうはいかないでしょ。手を尽くして見送れるんだもの、幸せなことよね。

取材を受けるのも嬉しいの。人生の終わりの方で、まさかこんな華やかな気分になれるなんてね!それに、末期のがんだってこういう生き方もできますよって、たくさんの人に知ってもらえたら素敵でしょ」

・・・とにかく前向きな加代さんなのです。

「この人ね、自分のことより私のことを考えてくれるの。私の負担にならないようにって。だから仲良くしていられるのね。ウフフ」

後藤先生
ほんと、仲良しですね、お二人
石賀先生
このご夫婦はめっちゃラブラブ。で、おもろい。話してるとまるで夫婦漫才みたいや

記念にパチリ。いしが在宅ケアクリニックでは、患者さん宅での写真をよく撮ります。撮影も大事なコミュニケーションなのですね。

後藤先生
素敵なご夫婦でしたね!
石賀先生
奥さん、可愛いでしょ。ご主人、男前やし

整理整頓!コンパクトな収納が際立つ院内

訪問診療を終え、クリニックに戻ってきました。院内を見学させてもらいます。

石賀先生自ら、いろいろと案内してくださいました。

500名の在宅患者を抱えるクリニックとは思えないほど、器具も書類も整理され、省スペースに収納されていますね。

石賀先生
規模の割には物が少ないって、よく言われます

往診バッグの中も、コンパクトに取り出しやすく整理されています。

後藤先生
参考になります!写真撮らせてください!
石賀先生
どうぞどうぞ


後藤先生
こちらも参考になります!

事務のメンバーのオフィスです。

石賀先生
医療秘書も皆、スペシャリストですよ

患者さんのカルテなど情報ファイルがズラリ。亡くなってからは5年間保存し、その後破棄します。

石賀先生
患者さんがどんどん増えてるから、結構ファイリングが大変で。今後どうするか、今、考え中なんです

 

患者さんを笑顔にしたい ―対談―

その後、石賀先生と後藤先生、お二人に対談していただきました。


石賀先生
一日同行して、いかがでしたか?
後藤先生
いしが在宅ケアクリニックの先生方への、患者さんやそのご家族の信頼感をひしと感じました!皆さん、訪問を心待ちにしているって感じで
石賀先生
在宅医にとって、信頼関係を築くことは絶対必要ですからね。特に初回訪問のときが肝心!信頼関係ができたと感じられるまで、帰らないんですよ、僕
後藤先生
警戒心や在宅医療に対する不安とか、患者さんには最初、いろいろありますもんね。先生は、コミュニケーションでそれを上手に取り除いてあげてるんですね
石賀先生
コミュニケーションをあんまりとろうとしない医者って、病院では結構、多いでしょ。患者さん、そりゃ不安だし、不満ですよ。在宅医ならなおさら、そんなんではあかん。うちでは『医療は究極のサービス業である』ということを徹底しています
後藤先生
先生は、介護するご家族にもすごく人気がありますよね
石賀先生
介護する人が疲れてしまうと、在宅医療を続けるのは難しくなる。だから、訪問したときは患者さんだけじゃなく、ご家族ともしっかり向き合って様子を見たり、相談してもらったりするんです
後藤先生
医者には言いにくかったり聞きにくかったりすることも、患者さんやご家族にはあって。そんなときは、看護師さんのフォローがありがたいですよね
石賀先生
本当に、看護師さんの存在は大きい。医師にとっても良きアドバイザーになってくれますしね。うちでは圧倒的に看護師重視です
後藤先生
在宅医療をしている者にとって、患者さんにもご家族にも、訪問を心待ちにしてもらえたら嬉しいですよね。先生はご自分の『王子様キャラ』を十二分に活用して、夢や希望を与えて、患者さんを元気にしている気がしますよ。医師は皆、それぞれ自分の持つキャラクターを最大限活かすべきなのだ、と。勉強になりました!
石賀先生
王子様キャラって・・・(苦笑)
後藤先生
ところで先生、在宅医は4の倍数で連携するといいとおっしゃってますね?
石賀先生
24時間365日体制でやるためには、4人のユニットが理想ですね。医師のQOL( quality of life)が保てますから。4人で曜日ごとにウイークデーの夜間待機当番を決めて、月4回の週末当番も4人で割り振る。これでしっかり、休みが確保できるでしょ
後藤先生
なるほど。しかし医師を4人集めるのは大変ですよね
石賀先生
そのためにも、クリニックを魅力的な職場にしないと、ダメなんです。労働環境とか、やりがいとか、ここでしか学べないものとか
後藤先生
末期のがん患者さんを、常に50~60名診てると聞きました。症例数が圧倒的というのも、学びたい医師には大きな魅力ですね


後藤先生
在宅医療は、医師も悩みが尽きなくて。私ね、これで良かったんかなーって後悔することが、いつまでたっても多いんです
石賀先生
緩和ケア医は、患者さんと出会ってからお看取りするまでの期間が短い場合が、どうしても多くなるでしょ。その少ない時間で、どれだけ笑顔にしてあげられるか、なんです。必要なのは、言い切れる自信。でも、経験値を上げないと、”自信が持てる”までにいかない
後藤先生
後悔することにならないために、必要なのは、自信?
石賀先生
そう。そして、こういう日程でこんなふうになりますよ、と自信を持って言えるようになるには、蓄積したスキルが要る。経験とクオリティを上げるんです。年間50人看取れば、それができます
後藤先生
確かに、患者さんやご家族が一番不安なのは、この先、どんな風になっていくのか、どれほどの苦しみが待っているのか、わからないことなんですよね。そこを、『こうなったらこういうことで、自然なことで苦しくないから、怖がらなくていいんですよ』と自信を持って言えたら、不安を軽減してあげられますよね
石賀先生
僕らは、看取りの2週間前くらいになると、こういう紙をご家族に見せながら説明するんですよ。看取りを悲壮感漂うものにしたら、負け。辛いものでなく、イベントに変えてあげるんです。それができるのが、在宅の看取りなんです

ご家族様に説明する際に使っている資料。お別れが近くなると現れてくる患者さんの症状や様子、その意味をわかりやすく説明してあります。

 

在宅医療は「幸せな医療」になれる

500名の患者さんを抱え、年間300人を看取る、いしが在宅ケアクリニック。自身も在宅医療に携わる後藤先生にとって、石賀先生に一日同行した経験は大きな意味があったことでしょう。

誰にだって必ず訪れる「死」。人々が恐れるのは、本当は「死」そのものではなく、そこに至るまでの痛みや苦しみがどれほどのものかわからないこと、なのかもしれません。

痛みや苦しみといった症状を取ってもらえるなら、不安を細やかにケアしてもらえるなら、自分の一番リラックスできる場所で、家族との時間が持て、身辺整理などもできる在宅医療は、患者さんにとって幸せな医療であるはず、という考え方があります。

お別れはもちろん辛いけれど、見送る家族にとっても「自宅で過ごしたいという希望を支えることができた」「最後までやりきった」という気持ちが生まれてきやすいのではないでしょうか。

「がんは悪いことばかりじゃない。今は本当に幸せよ」とおっしゃっていた陣田加代さんの言葉が、周囲を明るく照らしていました。この言葉、在宅医療に関わる人たちをも、幸せにしてくれる言葉だと思いませんか?


後藤先生
石賀先生、お忙しい中、一日ありがとうございました!
石賀先生
お疲れさまでした!お互い、頑張りましょう!

取材後記

今回、訪問診療に同行させていただき、石賀先生がなぜ地域のみなさんに愛され、四日市モデルを構築できたのか、その理由を垣間見ることができました。一つは、患者さんとご家族に徹底して目線を合わせた医療、そしてもう一つが徹底的に仕組み化され、医療従事者にも魅力的な職場づくり。石賀先生の元には見学や講演の依頼がたくさん届いているそうです。四日市モデルと石賀先生のスタイルが広まれば、幸せな在宅医療がさらに広まっていくだろうと感じる取材となりました。

(取材・撮影/ココメディカマガジン編集部、編集/磯貝ありさ)

医療法人SIRIUS いしが在宅ケアクリニック

〒512-8048
三重県四日市市市山城町770番2
TEL:059-336-2404 FAX:059-336-2405

http://www.ishiga-cl.com/

 

無料メルマガ登録

【無料公開中】人気記事を資料にまとめました!

資料ダウンロード「感染予防」