【海外の在宅医療】ヨーロッパ編① 世界から注目されるオランダの在宅ケア「Buurtzorg(ビュートゾルフ)」とは

これまで日本の在宅医療に注目を続けてきたココメディカマガジンですが、海外にも目を向けて見たいと思います。今回取り上げるのはオランダの非営利在宅ケア組織「Buurtzorg」(ビュートゾルフ)です。

オランダの非営利在宅ケア組織「Buurtzorg」(ビュートゾルフ)とは

Buurtzorg(ビュートゾルフ)は、2006年に創業した民間の在宅看護・介護組織で、2016年時点で、約10,000人の看護師・介護士が所属しています。

4人で創業した小さな組織でしたが、わずか10年間で急成長しており、現在では世界24カ国に事業が拡大しています。

そのほかにも、オランダ国内での顧客満足度がヘルスケア産業の中で最高、スタッフの満足度では全産業の中で1位を獲得するなど、短期間で驚きの結果を残しています。

在宅介護・看護の成功例として、世界から注目が集まっているBuurtzorg(ビュートゾルフ)。
果たしてどのような組織なのでしょうか。その特徴をご紹介します。

【特徴その1】スケジュールから提供するサービスまで。少人数チームで、セルフマネジメント

一つ目の特徴は、最大12人の看護師・介護士でチームをつくり、チームごとにセルフマネジメントしながらサービスを提供していること

チームのメンバー間にリーダー、マネージャーなどの階層がなく、利用者への聞き取りからサービスの提供まで、全員が一貫して責任を持って業務に取り組んでいます。

ビュートゾルフでは、定型のサービスが特に定められておらず、現場のスタッフが利用者や家族の要望に応じて自由に決定する体制をとっています。

例えば、介護・看護面でのケアだけでなく、利用者の希望次第で入浴などの生活支援なども行います。

また、サービスだけでなく、スタッフの勤怠やスケジュールなどもチームの裁量で決定することができます。

 

現場に大きな決定権を与えているのは、スタッフの専門性の高さが背景にあります。

オランダの看護・介護士の資格は5段階に分かれていますが、ビュートゾルフのスタッフの多くは学士以上に相当するレベル5の資格を保持しています。

また、「Buurtzorgweb」という独自のITツールを活用し、継続して知識を得られるような体制をつくっています。裁量が大きく、専門性の高い業務にあたることができる。さらにサポート体制も整っている!という環境から、スタッフのモチベーションも大きく向上します。

そして「Buurtzorgweb」では、チーム内外での情報共有を迅速・簡単にするために、チーム内やチーム間でのコミュニケーションや、利用者のケアプランの共有、スタッフ自身のシフト確認・マネジメントを行う機能を備えています。

ICTを上手に活用することで、現場での専門性の高いケアを行うことに集中できるわけです。そして機能を現場に集中することで、本部の管理部門の人数を必要最小限に抑え、コストを減らす効果ももたらしています。

 

【特徴その2】地域で多職種連携!地域包括システムでサービスを提供

二つ目の特徴は、地域包括システムを利用したサービス提供を行っていること

ビュートゾルフでは、1チームあたり5060人程度の利用者が割り当てられていますが、チームのメンバーは利用者の近隣に住んでいるスタッフが選ばれています。

なぜ、近隣のスタッフが選ばれるのでしょうか。

オランダの医療、介護の現状をみてみると、地域のつながりを活かした制度が多く活用されています。

まず、オランダでは、ほとんどの全ての人が近隣に住むかかりつけ医「General Practitioner」(GPと契約を結んでおり、直接病院を受診することはできません。

救急時を除いて、患者はまずGPを受診し、必要であれば専門医や病院にアクセスするプライマリ・ケア制度が導入されています。

これに加えて、家族や、友人、近隣住民が無償で介護する「マントルケア」も、医療費抑制の観点から積極的に利用されています。

このような背景から、利用者と同じ地域に住むスタッフでチームを作ることで、以前から利用者のことをよく知っているGPや、ソーシャルワーカー、栄養士、薬剤師などの専門スタッフ、介護にかかわる家族など、ほかの関係者との連携がとりやすくなります。

実際に、医療にかかわることはGPの指示のもと行われたり、GPや地域の専門スタッフと一緒に利用者を訪問したりと、多職種が連携したサービスが提供されています。

Buurtzorg(ビュートゾルフ)」はオランダ語で「地域ケア」を意味しています
目指す姿である地域ケアをまさに実現しているのです。

ビュートゾルフはなぜ普及した?オランダの医療制度を振り返る!

ビュートゾルフはこれほどまでに普及したのは、オランダの医療制度が一因となっています。

オランダはもともと福祉国家として、手厚い医療保険制度を国が行っていましたが、1970年代に経済状況が悪化したことをきっかけに、医療費抑制に向けた規制緩和がはじまりました。

医療・介護の現場でも、病院や施設から在宅ケア中心に変化したほか、1980年代後半には医療・介護でも市場主義が導入されました。

そして在宅での医療・看護サービスが分業化・出来高によって評価されるようになった結果、ケアの内容が画一化された断片的なものになり、質も低下しました。

そこで生まれたのがビュートゾルフです。

利用者の聞き取りによってつくられた、利用者の希望に添ったケアを、GPや地域の医療スタッフと連携して提供する。

オランダの医療制度が抱える課題を解決できるのがビュートゾルフだったのですね。

 

まとめ

今回はオランダの在宅ケア組織Buurtzorg(ビュートゾルフ)」をご紹介しました。
国民皆保険制度が導入されている、高齢化社会が進んでいるなど、日本とオランダには共通点が多くあります。地域包括システムの活用を目指す日本で、ビュートゾルフの活動は参考になる点も多くあるのではないでしょうか。

 

参考文献など

Buurtzorg service Japan

http://buurtzorg-services-japan.com/

Buurtzorg Nederland

https://www.buurtzorg.com/

2016 Buurtzorg Study

http://www.sknurses.co.uk/wp-content/uploads/2017/05/2016-Buurtzorg-Briefing-1.pdf

オランダのケア提供体制とケア従事者をめぐる方策 -我が国における地域包括ケア提供体制の充実に向けて-

http://www.jil.go.jp/institute/discussion/2012/documents/DP12-07.pdf

 

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