【海外の在宅医療・ドイツ編】世界で初めて社会保障制度を導入!日本との共通点が多いドイツの在宅医療・看護事情

日本の在宅医療だけでなく、海外の在宅医療に注目するシリーズ連載「海外の在宅医療」。第8弾はドイツです。世界で初めて社会保障制度を導入したドイツは、法的に在宅介護を推進しています。日本と同じ「社会保険制度」によって医療・介護が成り立つドイツでは、日本との共通点も多く見られます。そんなドイツの在宅医療についてご紹介します。

【海外の在宅医療・スウェーデン編】「在宅」が高齢者ケアの主流!スウェーデンの在宅医療・看護事情

2018.07.17

【海外の在宅医療・デンマーク編】世界で最も幸福な国。デンマークの在宅医療・看護事情

2018.10.09

財源のほとんどは社会保険料。ドイツの医療・福祉制度

ドイツは、世界で初めて社会保険制度が作られた国。ドイツ帝国の首相ビスマルクが、1880年代に医療保険、労災保険、年金保険という3種の社会保険制度を設けました。

また、1994年に作られた介護保険制度については、日本の介護保険制度の元となっています。

そんなドイツの医療・介護制度の最大の特徴は、企業や地方、また被保険者などから徴収した「社会保険料」によって多くが成り立っており、国(税金)による補助がかなり少ないこと。

これまでにご紹介した、スウェーデン、デンマークなど、主な財源が「税金」の国とは異なる形で運用されていますが、外来診療は原則無料など、充実した医療・介護サービスが提供されています。

また、施設介護ではなく、在宅介護を優先することを法的に明確に定めている点や、外来病院や医療保険の運営団体など、医療・介護について国民自らの判断(本人が原則で、家族の判断は認められません)で選択する場面が多い点も特徴といえるでしょう。

それでは、ドイツの医療・介護制度について、特に保険制度に注目して解説しましょう。

【医療】疾病金庫も、外来受診する病院も。自分が選択し、決定する。ドイツの医療保険制度

ドイツでは医療保険制度が導入されています。財源については、大部分が保険料によって賄われており、国による補助は少なくなっています。

運営するのは、地域や企業、職業によって組織された公法人「疾病金庫(日本の健康保険組合のような組織)」で、被保険者自身がどの疾病金庫に所属するかを選ぶことができます。

2017年時点で、113の疾病金庫がありますが、近年統廃合が進んでおり、減少しつつあります。

公的保険については、日本と異なり全国民に加入義務があるわけではありません。

一定所得以上の被用者、自営業者、公務員など、一部の国民は公的保険への加入義務がないため、2016年時点でのカバー率は約87%(約7140万人)となっています。

しかし、2009年からは、公的医療保険、民間医療保険のいずれかへの加入が義務化されたため、実態としては国民皆保険となっています。

給付については、ドイツの医療保険では、現物支給が基本。外来診療を受けられる「医療給付」のほか、日本ではカバーされていない予防医療にも対応しており、がんや生活習慣病の検診といった「予防給付」などの種類があります。

外来診療については基本的に無料で、薬などの一部負担を自己負担する形となります。

入院医療については1日当たり10ユーロの自己負担が必要になりますが、18歳以下については自己負担なしとなっています。

また、医師の種類については、これまでご紹介した国と同様、家庭医などの外来を担当する医師と、高度な治療を行う専門医師とに分かれています。

まずは家庭医などで外来を受診し、必要であれば専門医を紹介してもらう、という流れになります。

ただし、政府は基本的に家庭医での受診を推進していますが、自分で好きな保険医を選択して、外来診療を受けることもできます。

疾病金庫や、外来をどの医療機関で受けるか、そして公的保険、民間保険のどちらにするか。

様々な場面で自ら選択する必要があることから、医療・介護の場でも競争が発生するような仕組みになっています。その結果、効率的に医療・介護を運営しているのです。

【介護】サービスだけじゃなく、現金給付もできる。ドイツの介護保険制度

介護については、介護保険制度が導入されています。

運営するのは介護金庫ですが、医療保険を運営する疾病金庫が介護金庫の役割を兼ねているのが実態で、医療保険料と介護保険料を、疾病金庫が一緒に徴収する形となっています。

財源については保険料で全てがまかなわれており、国の負担は一切ありません。

介護保険の対象となるのは、基本的には医療保険と同じ範囲。

日本と異なり、年齢による制限がなく、たとえ若年層であっても要介護状態になった場合には介護サービスを受けられます

要介護認定については、医療保険メディカルサービス(疾病金庫が各州に共同で設置し、医師、介護士等が参加する団体)が、利用希望者の日常動作や認知能力などを「自立度」の観点から、どれほどの支援が必要か審査を行います。

要介護度は1~5の5段階に分かれており、数字が大きいほど支援の必要性が大きくなります。

給付については、現物給付(介護サービス)、現金給付、現物・現金給付を組み合わせた給付の3パターンから選ぶことができます。

ちなみに、日本ではリハビリについては介護保険の対象となりますが、ドイツでは医療保険の対象となります。

そして、ドイツでは在宅介護を優先することが、法律上明確に示されています

一方、施設でのケアについては、在宅介護やデイサービスなどの一時的な施設介護では在宅生活が困難な場合にのみ利用でき、要介護度1の人は利用できません。

在宅ケアの主な担い手は家族。ドイツの在宅医療とは

先ほどご紹介しましたが、ドイツでは在宅介護を優先することが法律に明記されています。

実際に在宅介護を利用している人は232.8万人で、要介護者全体の7割以上を占めています。

在宅でのケアについては、医療保険が適用される医療的ケアと、介護保険が適用される介護ケア家事援助に分かれています。

医療的ケアについては、看護師や老人介護士が担当しており、医師の指示の下、注射、カテーテルの装着、浣腸、薬を服用させるといったケアが行われます。

老人介護士は、日本の介護福祉士に近い資格で、専門教育を3年間受けたうえで、国家試験に合格する必要があり、看護師と同等のケアを行います。

介護ケアについては、家族が主な担い手となります。

少し古いデータになりますが、2005年時点で在宅介護を受けている要介護者のうち、家族(友人、隣人を含む)から介護を受けているのは67.5%となっています。

ただし、核家族化や女性の社会進出が進んだことにより、家族だけでは対応しきれないケースが増えてきたことから、現在では民間の介護専門職によるケアを受けるケースが増えてきています。

また、日本同様、介護の担い手が不足していることから、外国人労働者(不法労働者)を家庭で雇うことも多くなっているようです。

在宅介護を行う場合、介護保険の給付サービスを利用することになりますが、日本のようにケアマネージャーがケアプランを作成するのではなく、本人や家族、担当の介護士で内容を検討します。

医療と同様、本人の意思が尊重されるようになっています。

ケア内容は、在宅での介護のほか、デイケア・ナイトケアやショートステイといった一時的な施設ケアや、介護者の代理で介護を行うレスパイトケアなどが利用されています。

支援体制が充実!在宅介護者へのサポート体制

ドイツでは在宅介護の主な担い手が、家族や親戚、友人といった介護専門職以外の人であり、介護者への様々な支援が行われています。いくつか事例をご紹介します。

まず、日本と違い、介護事業者だけでなく家族なども、介護サービスを提供する存在として社会保険上位置づけています。

家族介護者は、「介護保険で要介護者と認められた人を、週14時間以上在宅で介護している人」と定義されており、この要件に当てはまれば、年金・医療・介護・労災・失業保険といった社会保険が介護者にも適用されます。

また、介護保険の給付に現金がある、というのも介護者サポートのひとつです。

現金を受給できるのは要介護者本人のみとなっていますが、使い方は自由で、家族や友人、ボランティアなど介護者の報酬に充てる、という使い方ができるようになっています。

2013年時点では、現金給付を選択したのは44.3%、現物・現金給付の併給を選択したのは15.6%と、何かしらの形で現金給付を受ける要介護者が多くを占めています。

特に近年では、現物・現金の併給が増加傾向にあります。

ただし、日本と異なり、要介護認定を受けるのが難しく、なかなか給付を受けられないという問題点もあります。

給付額についても、在宅や施設でのケアを全てカバーするには不十分であるという指摘もあります。

しかし、2016年の介護保険改革によって、要介護認定の審査方法が変わったほか、等級についても3段階から5段階に変更となりました。これによって2017年からは、これまで受給対象にならなかった人が要介護度1として認められるようになったほか、すでに受給していた要介護者も等級が変更となり、多くは給付額が増えることとなりました。

家族による在宅介護をサポートする体制を強化が、どんどん進みつつあるようです。

まとめ

家族による在宅介護を積極的に推し進めるドイツ。社会保険制度が導入されている点や、公的な介護保険制度が存在し、要介護度に基づいてケアが提供される点など、日本との共通点も多くあります。また、高齢化が進んでいる点や、介護者が不足している点など、取り巻く社会環境も似ています。

一方で、家族による在宅介護も仕事として認められ、社会保険が適用されるなど、ドイツ独自の特徴もみられます。特に介護者への支援体制については、在宅医療を推進する日本にとって、取り入れるべきポイントかもしれません。

<参考文献など>

宮本恭子 「ドイツにおける家族介護者支援の構造的特徴」

宮本恭子 「ドイツにおける家族介護の社会的評価」

齋藤 香里 「ドイツの介護者支援」
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19857503.pdf

藤本健太郎 「ドイツの医療保険者機能について」

https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/10431.pdf

厚生労働省 2017年 海外情勢報告(ドイツ)

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/18/

株式会社キャンサースキャン「諸外国における訪問看護制度についての調査研究事業 報告書」

https://cancerscan.jp/wp-content/uploads/2015/05/678803a33b72f64f190deb3ce3bfad6c.pdf

認知症介護情報ネットワーク 海外認知症ケア情報「ドイツ」

https://www.dcnet.gr.jp/retrieve/kaigai/houkoku_frg.php#de01

【無料公開中】人気記事を資料にまとめました!

資料ダウンロード「感染予防」