【海外の在宅医療・韓国編】家族が介護に前向きに取り組めるようになるには。韓国の在宅医療・介護事情

日本の在宅医療だけでなく、海外の在宅医療に注目するシリーズ連載「海外の在宅医療」。第9弾は高齢化が急速に進む韓国です。日本とドイツの制度を基に2008年に介護保険制度が作られた韓国では、家族による在宅ケアが中心となっています。そんな韓国の在宅医療・介護についてご紹介します。

【海外の在宅医療・台湾編】外国人労働者が介護の主役!台湾の在宅医療・看護事情

2018.09.11

【海外の在宅医療・ドイツ編】世界で初めて社会保障制度を導入!日本との共通点が多いドイツの在宅医療・看護事情

2018.11.13

人口抑制策の裏で…高齢化が進むアジア

世界の多くの国で問題視されている少子高齢化。

先進国のみが抱えている問題ととらえられがちですが、アジアの国々でも高齢化が進みつつあります。


アジアの国々で見られる特徴は、高齢化のスピードが速いこと。

中国の一人っ子政策に代表される人口抑制策が各国で導入された結果、政策導入以前の人口が多い世代が、短期間で高齢者となることから、高齢化が加速してしまうのです。

また、社会保障制度が整備される前に高齢化が進んでしまうため、財源の確保が難しく運用が困難になる、といった点も特徴といえます。


韓国も他のアジアの国々と同様、人口抑制のための家族計画を1960年代に導入しており、その結果少子高齢化が急速に進んでいます。

2016年時点の高齢化率は13.2%(高齢者人口は676万人)と他国と比較してそれほど高くありませんが、2018年には14%、2025年には20%を超える見込みで、他に類を見ないスピードで進行しているといわれています。

日本と同様に高齢化が進む中で、どのような医療・介護制度が行われているのでしょうか。

韓国の医療制度

韓国の医療・介護システムは「低福祉・低負担」といわれています。

福祉の水準は下がってしまうが、その代わりに国や国民の負担を小さくする。

そんな制度を作ったのには、他の先進国と比べて高齢化が顕在化するのが遅かったことが背景にあります。

日本をはじめとした他国が、財政上大きな負担を抱えながら社会保障制度を運用している現状を踏まえて、制度設計されているわけです。


韓国の医療は、社会保険方式で運用されており、財源の多くは国民からの保険料となっています。

保険料は、報酬月額の3%程度(2017年)と日本と比較して低い水準であることがわかります。


医療保険については、1963年に医療保険制度が導入されましたが、当初は主な対象者が300人以上の事業所の任意加入方式でした。

その後徐々に範囲を拡大し、1989年には国民皆保険を達成しています。

運営主体については、統合の結果一元化され、現在は国の行政機関である「国民健康保険公団」となってています。


病院の受診については、韓国ではプライマリケアが導入されていないため、日本と同様に自分で受診したい病院を選ぶことができます。

日本と異なる点として挙げられるのが、医療機関受診時の自己負担割合

韓国には、外来や入院、リハビリでの治療を担当する病院、薬局など様々な機能を持った医療機関がありますが、受診する目的や医療機関の種類によって、自己負担割合が変化します。

最も自己負担割合が高いのは、上級総合病院を外来受診する場合(原則としてその他の医療機関での受診の結果、必要と認められた場合に限られる)で、診察料総額と残りの療養給付費用の60%を負担する必要があります。

その一方で、通常20%の自己負担が求められる「入院」について、難病患者は10%、ガンなどの重病については5%と、疾患によっては負担が軽減される場合もあります。また、混合診療が認められていることも特徴です。

韓国の介護保険制度

高齢化が急速に進む韓国では、日本と同様に、核家族化、女性の社会進出が進んでおり、家族による介護が困難な状態になっています。

そこで2008年に、加齢や病気により一人では日常生活を行うことが困難な高齢者に対して、身体介護や生活援助などの介護サービスを提供し、生活の安定と家族の負担軽減を図る制度として、「老人長期療養保険制度」が導入されました。

日本の介護保険制度に該当する制度で、日本とドイツの介護保険制度をベースとした上で、財政面など韓国社会に合わせた制度になっています。

財源は、社会保険料によってまかなわれています。

運営するのは医療保険と同じ、国民健康保険公団です。

要介護認定やケアプラン作成も、国民健康保険公団が行っており、日本のケアマネージャーに相当する職種が存在しないのも特徴といえます。

制度の対象者については、65歳以上の高齢者と、老人性疾病を持つ20歳以上65歳未満となっており、日本より幅広い年齢が対象となっています。

韓国で介護サービスを利用するには

現在韓国で受けられる介護サービスは、在宅介護サービスと、施設サービスの2種類。

在宅介護については、さらに細かく分けられていて、訪問療養(訪問介護)、訪問入浴、訪問看護、昼・夜間保護(デイ・ナイトサービス)、短期保護(ショートステイ)などのサービスがあります。

介護サービスを利用したい場合、要介護認定を受ける必要があります。

要介護認定は、日常生活への支障の程度に応じて1等級 (日常生活のすべてに療養が必要。最も重い等級)から4等級に分類され(*)、国民健康保険公団が、要介護者の心身の状態に加えて、介護者の有無や要介護者の居住環境を、自宅を訪問して評価し判断します。

なお、日本と比較すると受給対象の範囲が狭められており、日本の要介護度2以上と同等でないと介護保険の給付対象にはなりません。

(*)これらと別に、認知症患者を対象とした5等級もあります。

在宅介護に取り組む家族を支える「同居家族療養制度」とは

韓国では、介護サービス全体のうち、在宅介護サービスの利用が7割を占めています。在宅介護が主流であることがわかりますね。

政府も財政上の懸念から在宅介護を推進しており、在宅介護の方が自己負担割合が少なく済む(在宅介護サービス:15%、施設介護サービス:20%)仕組みとなっています。

在宅介護のうち、特に利用者数が多いのが訪問介護です。

在宅介護サービス全体のうち、7割と大部分を占めている一方で、訪問看護、ショートステイなどの利用は少なくなっています。

認知度の低さや、訪問介護と比較して自己負担額が多いことなどが背景にあるようです。


そして、在宅介護の利用を進めるために導入されたのが、介護者である家族をサポートする「同居家族療養制度」です。日本のヘルパーに相当する療養保護士の資格を取得した後に、同居する家族(要介護者)を介護すると、それに対する報酬として一日あたり2時間分の現金を得られる仕組みになっています。

また、取得した療養保護士の資格を使って、仕事として他の人に対して介護を提供することもできます。

ドイツでは、家族介護者が、介護サービスを提供する存在として社会保険上きちんと位置付けられており、年金や医療の給付を受けられる、ということを以前ご紹介しました。

韓国では現金の給付という形で介護者をサポートしているのですね。

この制度によって、介護者は、職業として介護によって収入を得られるだけでなく、その収入によってさらに外部の介護サービスを受けられるようになり、家族の負担軽減につながっています。

また、介護者が介護を肯定的にとらえられるようになるという研究結果もでています。

まとめ

社会保障にまつわる制度が整備されてから、まだ歴史が浅い韓国。しかし、新しいからこそ、他国の経験を踏まえた制度設計がなされているといえます。在宅介護に取り組む家族をサポートする「同居家族療養制度」は、介護者のモチベーションを上げるのに良い制度なのではないでしょうか。今後在宅医療がもっと普及する日本でも、介護者が前向きに介護に取り組める仕組みづくりが必要かもしれませんね。

参考文献など

金成垣、大泉啓一郎、松江暁子 「アジアにおける高齢者の生活保障―持続可能な福祉社会を求めて」

林春植、宣賢奎、住居広士 「韓国介護保険制度の創設と展開―介護保障の国際的視点」

厚生労働省 2017年 海外情勢報告(大韓民国)

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/18/dl/t4-04.pdf

西下彰俊「韓国の老人長期療養保険制度におけるケアマネジメントの課題―在宅ケアを中心に―」
http://www.tku.ac.jp/kiyou/contents/law/20/Nishishita_Akitoshi.pdf

小島克久「韓国の社会保障(第2回) 韓国「国民健康保険」について」

http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/sh20212217.pdf

張英信「韓国における家族介護者の肯定的介護認識に関する研究─同居家族療養制度の利用との関係に焦点をあてて─」

【無料公開中】人気記事を資料にまとめました!

資料ダウンロード「感染予防」