海外の在宅医療(全9回)まとめ

日本でも政府の推進もあり、普及しつつある在宅医療。日本だけでなく、世界の国々の在宅医療を知ろう!ということで、2018年5月からはじまった連載「海外の在宅医療」について、これまでの9回の連載の特徴をまとめました。気になる国を改めてチェックしてみましょう!

高負担・高福祉「税方式」の国―スウェーデン、デンマーク、イギリス

福祉国家として知られるスウェーデン、デンマークでは、医療・介護制度における財源が税となる「税方式」によって、医療・福祉制度が運営されています。

医療、介護、福祉での自己負担がほぼないほか、地方自治体が運営主体となっていることから、地域ごとに制度に特色がみられることも共通の特徴として挙げられます。

  スウェーデン

医療についてはランスティング(県)、高齢者や障がい者への福祉についてはコミューン(市町村)が提供しており、財源はそれぞれの地方税となります。

高齢者のケアについては、病院や施設ではなく、自宅や高齢者住宅(「特別な住居」と呼ばれる)での在宅ケアが中心となっており、コミューンが担当しています。

看護師や准看護師などの医師以外の職員が中心となって実施する「訪問看護」のほか、家事支援や身体介護を行う「ホームヘルプサービス」、コミューンが業務委託したバスやタクシーを利用できる「移送サービス」など、様々なサービスが提供されています。

  デンマーク

スウェーデンと同様に、医療についてはレギオナ(広域自治体)、看護・介護についてはコムーネ(市)が運営しており、財源は全て税金で賄われています。

家庭医によるプライマリ・ケアが導入されており、診療のうち約90%は家庭医での対応が占めています。

介護については、自宅や高齢者住宅など 「在宅での24時間ケア」が主流。

要介護認定や、介護サービスの使用回数に制限はなく、自治体の判定員が利用希望者に対して実施したアセスメント内容を基に判断します。

施設については、全廃に向け政府が取り組んでいます。

イギリス

医療については、国が運営する国民保健サービス(NHS、地域ごとに4つに分轄されている)が、介護については地方自治体が主体となって提供しています。

いずれも財源は税金で、国民の自己負担額は非常に少なくなっています。在宅医療・看護については、「地域保健サービス」という形で実施されており、地域看護師による医療的なケアのほか、保健師による健康指導、ヘルスケアアシスタントによる入浴などの身体介護などが提供されています。


社会保険料で運営する「社会保険方式」の国―ドイツ、韓国

財源の大部分が企業や地方、国民などからの社会保険料で賄われている「社会保険方式」で医療・介護が運営されているドイツ、韓国。

介護サービスの利用にあたり、要介護認定が必要な点など、同じ社会保険方式の日本と類似点も多くみられます。

ドイツ

世界で初めて社会保険制度が導入された国。

現在は在宅ケアが主流で、要介護者の7割は在宅介護を利用しています。法的に在宅介護を優先することが明言されている国でもあります。

また、在宅介護の主な担い手が家族であることから、家族介護者へのサポートが手厚いのも特徴で、要件を満たせば、年金・医療・介護・労災・失業保険といった社会保険が適用されます。

  韓国

ドイツと同様に在宅介護が主流で、要介護者全体の7割程度が在宅ケアを利用しています。

財政上の懸念から、政府が在宅介護を推進しており、施設でのケアと比較し自己負担額が少なく済む仕組みとなっています。

家族介護者を支援する制度が導入されており、日本のヘルパーに相当する療養保護士の資格取得後に、家族介護者が同居家族に介護を提供すると、報酬として一日あたり2時間分の現金を得られる仕組みとなっています。

民間事業者、外国人介護労働者によるケア…公的保障がない国―アメリカ、台湾

医療・介護制度を、税方式・社会保険方式で運営する国々をご紹介しましたが、公的なケアがあまり十分でない国もあります。

その場合、家族などによるインフォーマルケアのほか、民間事業者や、外国人介護労働者によるケアなどが利用されているようです。そんな事例をまとめました。

アメリカ

社会保障面での政府の介入が少なく、公的な医療保険については、高齢者と障がい者を対象とした「メディケア」と、低所得者を対象とした「メディケイド」の2種類のみ。

現役世代など、どちらにも該当しない国民については、2014年以降、民間の医療保険に原則加入することが義務付けられています。

経済的な理由から、家族やボランティアなどから無償のケア(インフォーマルケア)を在宅で受けることが主流となっており、地域に住む高齢者の9割はインフォーマルケアを受けているといわれています。

台湾

介護制度については、2000年代後半から法律の整備がはじまり、現在構築中の段階にあります。

公的な在宅ケアを利用したい場合は、直轄市や県市政府から要介護認定を受ける必要がありますが、2014年時点での要介護認定者数は約15.5万人なのに対し、要介護高齢者(認定者ではない)は約44万人と大きな乖離があるのが実情です。

なお、介護保険制度については、以前導入が検討されていたものの、現段階では実現していません

公的ケアが受けられない場合、外国人の介護労働者である「外籍看護工」による家庭で介護を利用することが多く、要介護高齢者の約4割をカバーしているといわれています。

「地域包括ケア」で在宅医療・介護に取り組む国―タイ、オランダ

日本が目標とする地域包括ケアを活用した国をまとめています。オランダについては、民間の在宅看護・介護組織「Buurtzorg(ビュートゾルフ)」の取り組みについてご紹介しています。

タイ

高齢化が急速に進みつつあり、福祉国家実現に向け政府が取り組んでいる最中となります。

医療については、職業ごとに税方式(公務員、農民、自営業など)、社会保険方式(民間企業の被用者など)と財源が異なりますが、国民皆保険を実現しています。保健所が一次医療を提供し、必要に応じて専門医を紹介するプライマリ・ケアも導入されています。

一方、介護保障の仕組みは存在せず、家族やボランティア、地域のつながりなどによる「コミュニティケア」によって介護がまかなわれています。

中心的な担い手は政府が養成するボランティアで、自宅に訪問し健康指導などを行う「健康ボランティア」については、1970年代にはすでに活動を開始していたことがわかっています。

オランダ

地域包括ケア、多職種連携を実現した事例として、民間の在宅看護・介護組織「Buurtzorg(ビュートゾルフ)」をご紹介しています。

利用者の近隣に住んでいる最大12人の看護師・介護士でチームをつくり、聞き取りや看護・介護サービス、生活援助(家事支援)を行います。

必要に応じて、かかりつけ医や、ソーシャルワーカー、栄養士などの専門スタッフ、介護職員といった地域関係者と連携し医療・介護を提供します。

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